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S4-86 23日目:魔法で食堂中の衛兵を躍らせる [ソーサリー4:王たちの冠]

食堂の外観は大きく、入り口は片開きだ。中では、あらゆる階級の衛兵がテーブルの席でひしめき、獣人、オーク、人間の誰もが、シチューの器を前に背を丸めて食事している。酒で酔っ払って、食堂中をふらついている者もいる。
変装が通じるよう祈りながら、ここに入れるか試してもいいだろう。

衛兵でごった返す大食堂に入る。
君が入った瞬間、沈黙が下りる。一人が君を見上げる。
「隊長殿ですかな?」上から下まで君をじろじろ見ながら、男が尋ねる。
「いかにも、」君が応じる。「この辺りは初めてだが。」
「おかしいな、」男が答える。「それなら誰かが俺に言いそうなものだが。」
この男が何者なのか悟って気が重くなる。奴はここの隊長で、間違いなく君の変装を見抜いたのだ。
君が笑うと、そいつも笑い返した。それからパンの厚切りを君に向かって払い落とす。「奴を捕らえろ。」
衛兵の集団が君の方へ突進してくる。戦闘になったら敵いそうもない…。
「JIG!」
竹笛を引っ張り出しながら呪文を唱え、演奏を開始する。果たして呪文がこんな大勢に効くのだろうかと君が思った時にはすでに、連中は踊りたい気持ちで一杯になっていた。
たちまち足踏みや舞い踊る人々が食堂中に増殖していく。

演奏を続ける。その光景や音は、君が今まで旅して見てきたどれにも似つかない。衛兵どもは、まるで今までの人生で一度も踊ったことがないかのように、あるいは何かに興味を持ったことがないかのように踊りに熱中している。
ある者はテーブルや椅子をなぎ倒しながら、床でクルクル舞っている。二人一組になって踊っている連中もいる。ある衛兵などは、相手に情熱的なキスすらしている。君が荒々しい旋律を吹くたびに、彼らの兜がぶつかり合う。
全てが気ままで混沌として美しかった。マンパンでは何世紀もの間見られなかった、あるいは極めてまれであったろう光景だ。

君はなおも演奏を続けたが、衛兵達は体力の限界だった。一人また一人と踊りから脱落していく。
呪文は効果が弱くなってからも長い時間続いた。彼らを躍らせ続けたのは、彼ら自身の心から来る感情だったのだ。
君はもう少しで大笑いしそうになった。マンパンの大食堂でこんなことをやらかしたのだから!

最後には、君の周りには笑顔の人々が残った。
なおも衛兵でごった返しているが、軍隊というよりも普通の町の光景に近い。テーブルがゆっくりと元に戻されていく。
君の変装に騙された数名が、通り過ぎる君に会釈や挨拶を寄越してくる。


【感想】
時の大蛇ですら従わせたJIGだけのことはあります。
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