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S2-79 9日目:同室のエルヴィンと共に脱獄 [ソーサリー2:罠の港街カーレ]

牢屋の中に放り投げられた君は、先客の上にまともに着地した。
立ち上がって埃を払ってから、同室者に詫びる。相手はエルヴィンだった。消耗してへとへとのようだ。
彼が君にうなずく。「僕の狭苦しい国へようこそ。」
「あんたは誰だ?」君が尋ねる。
「外の世界での僕の名前なんて、ほとんど意味がないよ。」エルヴィンが微笑んで答える。「ここでの僕の名は6番だ。それに、あんたの名前もそうなるだろうね。」彼が骨ばった指で指し示す。「見なよ、扉の上に書かれてるから。」
壁越しに聞こえる音から判断するに、ここは隣り合った幾つかの独房の一つだ。いびき、叫び、悲鳴などが石壁越しに聞こえてくる。
「あんたはエルヴィンなんだな。」君が言う。「俺はこれまであんたの種族に会ったことはなかったが、噂には聞いているよ。」
彼が肩をすくめる。「そりゃ、エルヴィンは相手をかなりイライラさせるよ。」彼が言う。「だからって、連中が僕を閉じ込める理由にはならないさ。」
独房内にはバケツが1つあるきりだ。弁解を口にしながら、エルヴィンが用を足す。
「ここはどんな場所なんだ?」
「レッドアイの監獄さ。」エルヴィンが言う。「外に1人いるだろう。」彼が小窓いっぱいに見える守衛の顔を指差す。
「あんたは何故ここにいる?」
「それがさ、」何かしらの感情のこもったため息をついて、彼が答える。「何か月も前に逮捕されて以来、僕は毎晩自問してきたけど、いまだにそれが分からないんだ。ここの連中を怒らせるようなことは何もしちゃいない。唯一思い当たるのは、レッドアイは誰かを閉じ込めないと満足できないんじゃないかってことだ。」彼が弱々しく笑う。「今はあんたがここにいるから、僕を解放してくれるかもな。」
「あるいは、俺を解放するかもな。」
「そうだね、」エルヴィンが心から笑う。「奴らの側からしたら、面白いジョークだ。」
彼の心はずいぶんとくじけてしまっていたのだと君には分かった。部屋の隅のバケツから漂ってくる臭気がかなり酷い。
「どうやったら脱出できる?」君が尋ねる。
「逃げるだって?」エルヴィンが笑う。「逃げ道があったら僕がここにいると思うかい?それに、僕が試していないとでも?僕はエルヴィンだ、じっと座ってたりしないよ。」
それは正しかった。こうして君と話しながらも、常に彼はそわそわしているのだ。
開錠の呪文を唱えるために精神を集中する‐だが何も起きない!
エルヴィンが苦々しげに笑う。「壁にはミニマイトの血が注がれているんだよ。」彼が言う。「その方法で脱出しようとする者を止めるためにね。僕も自分の魔法を使って試してみたんだ。」
背負い袋を漁って、クリスタタンティ郊外で乞食にもらった鍵を取り出す。守衛が扉に背を向けるまで待ってから、鍵を手に扉に駆け寄る。
回った!エルヴィンが音を立てないように拍手する。
君達2人は扉を開けた。守衛はまだ背を向けたままだ。チャンスだ。
足音を忍ばせて移動し、部屋の隅からバケツを取り上げる。エルヴィンは不思議そうに君を見たが、何も言わなかった。
バケツを高く振りかぶって、つま先立ちでじりじりと進む。そして最後の瞬間、それを守衛の頭に逆さまに被せた!言いようのない中身が彼の顔を流れ落ちる。しばらくは何も見えないはずだ!
2人で守衛の腕を両側から掴んで独房の中へ引きずっていく。
「上出来だ。」エルヴィンがささやく。「さあ、ここを出よう!」彼が扉の外に駆け出す。
守衛の身体を探り、すでに君が持っているのと同じ鍵の複製と、2枚の金貨を見つける。
「早く!」エルヴィンが戸口から声を掛ける。
君は通路に飛び出し、背後で扉をバタンと閉じた。そして、銅の鍵で施錠する。
「そこから逃げて!」エルヴィンが叫ぶ!彼は正しかった。牢屋の中では、守衛がバケツを脱いで窓のそばまで来ていたのだ!
君が角を曲がるのとほぼ同時に、背後の壁で炎の光線が炸裂した!奴は牢の扉をガチャガチャ動かしているが、開けられないようだ。
太陽の光を目指して階段を急ぐ。


【変化点】
・現在/最大体力:14/20→13/20(魔法)
・金貨:35→37

【感想】
最臭兵器炸裂!ブラッドソード第4巻でも、牢屋からの脱出の際に、し尿の入ったバケツにマントを浸して、それで顔を覆って火事から避難する選択肢が出てきます。冒険者たるもの、このくらいできないようでは生き残れないんでしょう。それにしても…。
このエルヴィン、魔法も使えるようです。そして、ミニマイトの血を塗り込んだ対魔法防壁は、第4部の山場でも登場します。
また彼曰く、今回使った脱出口は監獄の補給品搬入路だそうです。
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コメント 2

伝説の勇者

ミニマイトの血だけでも魔法妨害効果はあるんですね。つまり魔法が使いたいのにミニマイトがいるという場合、ミニマイトを殺したとしても、その死体を遠くへ捨てなければ魔法は使えないという事になりますね。
最臭兵器…2chで、最悪のゴーレムの材料は人糞だという話があったのを思い出したりして。
どうして牢獄の扉の内側にも鍵穴があるのか不思議でしたが、守衛が囚人の反乱にあって牢獄に閉じ込められた時に、自分の鍵で開けられるようにという事なんでしょうか。この守衛は自分の鍵も取られてしまいましたが、熱線で扉を敗れそうですね。
by 伝説の勇者 (2017-03-02 22:06) 

teamtomtom

それにしても、なぜこの監獄は入念に対魔法防御までしてあるのでしょう?エルヴィンやブラックエルフを閉じ込めるには必要でしょうが、魔法を使える人口の比率がそんなに高いとは思えないのですが。もしかすると、上カーレという場所柄、ちょっと高級仕様なのかも(でもトイレはバケツ)。
by teamtomtom (2017-04-09 12:47) 

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