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S2-80 9日目:逃走の果てにヴィック信望者の鍛冶屋に出会う [ソーサリー2:罠の港街カーレ]

出てきた場所は、監獄の壁の外側の路上だった。
横道をジグザグに進んで逃げる。
狭い独房での長期にわたる収監で弱っていたエルヴィンは、君のペースについてこれていない。だが、自由になるという大きな喜びで、つまずいてよろけながらも笑っている。

最初の分かれ道を右に曲がる。
「どこに向かっているか分かってるのかい?」エルヴィンが尋ねてくるが、返事をしている時間はない。

次の分かれ道も右に曲がる。
エルヴィンが弱ってきた。彼はこれ以上走り続けられない。
「行ってくれ、」数歩後ろで彼があえぐ。「僕は、ここに、隠れる。」
「お前はもうすぐ自由なんだぞ。」彼の腕の下を掴みながら答える。
「ばかだな、つまりこういう事だよ。」自由になろうともがきながら彼がささやく。「僕が隠れる、そしてあんたは守衛達を引き連れて走るんだ。さあ、行ってくれ!」
「いい計画だ。」君が答える。
「そうさ、」箱やがらくたの山の中に身をうずめながら、エルヴィンが言う。「もう行ってくれ。」
彼との別れは心が痛むが、彼が正しいのは君にも分かっていた。彼の幸運を祈りながら駆け出す。
エルヴィンはごみの中に潜り込んで横になっている。たぶん彼とはまた会うだろう。

左に曲がって走り続ける。
唐突に、路地から煙が充満した狭い通りに飛び出す。走るのを止めて息を整える。
通りを進んで角を曲がると、煙の出元が分かった。火‐だが家が燃えているのではなく、大きな鍛冶屋に据えられた巨大な炉から発せられている。鍛冶師自身は平刃の剣にハンマーを振り下ろして仕事の真っ最中だ。
鍛冶師に近づいて、彼の注意を引こうと棚に陳列している品物を幾つか叩く。だが、ハンマーを振るって金属に火花を飛ばしてきた長い年月は、彼の周りのあらゆる作品と難聴とを彼に残したようだ。
歩み寄って彼の腕を軽く叩くと、男は飛び上がった。
「なんでえ、急に!」大声で彼が怒鳴る。明らかに、この男はあまり賢くない。
「ちょっと聞きたいんだが。」
鍛冶師が肩をすくめる。「大したことは知らねえよ。」正直そのものといった雰囲気で彼が答える。彼は愛おしそうに剣を磨いている。
「その剣は?」
「こいつは俺の最高傑作でな、」研磨していた剣を見せびらかしながら、彼が誇らしげに言う。「大手持ちの剣だ。」
「大手持ち?両手持ちのことか?」
「大手持ちだよ、」鍛冶師が同意する。「これは大手持ちなんだ。」
剣を試そうと君が手を伸ばすと、彼が君の腕を掴む。「前もって言っとくがな、」彼が言う。「一度こいつを手にしちまったら、もう他のは欲しくなくなるぜ。それにこの剣は安くはねえ。」
「覚悟の上さ。」
彼が肩をすくめて君の腕を放す。「そんなら、やってみな。」
君は剣を持ち上げて、それで空を切った。剣が歌っている。重さは申し分なく、金属は鋭利で、精巧なバランスはまるで君の腕の延長のようだ。今まで君が握ってきた中で最高の剣だ。
「幾らだ?」
鍛冶師がニヤリと笑う。「だから言ったろ。いいか、よく聞けよ?金貨4ずう枚だ。」
「4ずう枚?40枚なのか?」
鍛冶師がうなずく。「そう、4ずう枚だ。」
「それは高過ぎる。」
鍛冶師は君から剣を取り返すと、大事そうに扱った。「こいつはきっとすぐに持ち主を見つけるぜ。」
「銀製の武器を売ってるか?」君が尋ねる。
「ああ、造ってる。」彼が答える。「だがここでは売ってねえ。市場で売ることにしてるからな。広場を過ぎて、墓地の方へ向かうんだ。いい弓矢があるぞ。」
鍛冶師はすぐに仕事に戻った。騒音で頭がくらくらする。
「あんたは狼用の鎧を作るのか?」君が見た奇妙なウェアウルフを思い出しながら尋ねる。
鍛冶屋が凄まじく冷酷な目つきで君を見る。「第1貴人にヴィックを!」そう言ったきり、彼は何もしゃべろうとしない。
「ヴィックは軍隊を組織するつもりだ。」君が答える。「それは本当なのか?」
鍛冶師が首を振る。「ヴィックはちゃんとした指導者なんだ。」彼が言う。「税金を払ってる限りはな。」
彼は店の奥に行ってエールをぐいっと飲み干した。「俺はいい仕事をするだけだ。」戻ってきて彼が告げる。「もうあっちへ行け。」
それから彼は騒々しくハンマーを振るい始めた。その音に恐れをなした君は、すぐに店から駆け出した。


【感想】
訛った英語がまた登場。there→thar、one→wan、ya→you、you have→yarv、not→nat、blade→blard、go→gar、told→tarld、find→farnd、make→mark、towards→ta-wards、your→yerなど。水夫の言葉(S2-61)と違って、方言としてちゃんと辞書に載っているものもありますがキツイはキツイ。
その他、two-hand(両手持ち)をlarge-hand(気前のいい)に、forty(40)をfarty(屁)に言い間違えているようです。今回はちょっとした言い間違いや訛りとして表現してみました。
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伝説の勇者

訛りと洒落は翻訳しづらい文章の代表でしょうね。関西弁を訳す外国人とかも、こんな苦労をするんでしょうね。
これを書いていて、3巻の黒エルフを笑わせるイベントが健在で、しかも原作と違う駄洒落が出てきたら翻訳に苦労しそうだな、などと思ったりして。
大手持ちの剣って、原作の両刃の剣の事でしょうか。でもあれの値段は金貨4枚でしたし、バランスが悪かったので別物か?
by 伝説の勇者 (2017-03-12 12:12) 

teamtomtom

訛ったセリフ、この男の場合は教養のなさが難解さに拍車をかけています。でも仕事は一級品。
by teamtomtom (2017-04-09 13:19) 

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