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S4-30 19日目:本性を現した悪霊を退治 [ソーサリー4:王たちの冠]

少女の姿が縦に伸び始め、手足が部屋の影と混ざっていく。フィルドリックが後ずさる。彼の幽体がいつも以上に虚ろになっている。
「役立たずの生者め、」彼女が言う。「お前達にはたった一つの取柄しかないというのに。」彼女が君に迫るにつれ、その声がだんだん大きく耳障りになってくる。
君は銀の小剣を抜いて、少女に突き刺した。刃で切り裂かれるたびに、畏怖の唸り声が上がる。
「そんな、」彼女が金切り声で叫ぶ。「そんなことがあり得るのか…?」
彼女の姿が何か違う形に変わっていく…。
何度も斬り付けると、少女は完全な死霊の姿となった。だがあまりに長い間ここに封じられていたため、その力は弱まっていた。
彼女のボロボロの姿を切り裂くと、死霊の傷口から空気が四散していった。
少女が視界から消え去ると、フィルドリックが人目もはばからずにすすり泣き始めた。

まだ身体が震えるものの、宿屋のフロントまで戻る。
彼女が残した唯一のものは、扉のそばに落ちていた金髪のかつらだけだ。
それを拾い上げる。人間と植物の繊維が混じっている。
「彼女は望み通りに姿を変えられるのに、」フィルドリックがつぶやく。「何故わざわざそんなものに頼っていたのだろう。もしかすると、それが気に入っていたのかも。」
彼は玄関口でふさぎ込んだ。「もう満足しただろう?」君が近づいていくと、彼が言った。
「何故彼女の正体を警告してくれなかった?」
「しようとしたさ、」悲しげに彼が答える。「でも俺が思い出せたのは、あの呪文がいかに致命的かってことだけで、あんたはそれを無視したじゃないか。」
「分かるわけがない。」
「あんたが銀の剣を持っていたことだけは嬉しく思うよ。死が自由に闊歩するザメンでも、そんなものを持ち歩こうなんて大抵の人は思わないからな。」
「ここで何があった?」君が尋ねる。「さっき起きたことがよく理解できないんだが。」
彼がため息をつく。「彼女が俺を殺したんだ。この部屋で、彼女は俺の身体をズタズタに引き裂いた。たぶんここで俺を追い詰めた。拘束の呪文は彼女を捕らえるためだったんだが、俺は自分と一緒に彼女を閉じ込めた。だから、死んだ俺もここに囚われたのさ。」
「あんたは魔法使いだったのか?」
「魔法の学徒といったところだが、まあその通りだ。山中の要塞に住んで魔法を教えていた。だが、その生活のほとんどが思い出せないんだ。」
「マンパンについて教えてくれ。」期待を込めて君が切り出す。
「マンパンのことなんて何も知らない。」幽霊が苛立ちで唸り声を出す。「俺は精神も生命も失ったんだ、分からないのか?」
「でも、あそこでは学者だったんだろう?」
「あ、ああ、そうだった。」しばし、彼が声を落とす。「2つ,3つ思い出したぞ。魔法の練習と改良が行われた学校の教室。食堂での口論。外庭から中郭に通じるトンネル。あれは何回か使ったな。」
束の間、彼の目にきらめきが宿る。
幽霊が重々しく息を吐き出す。「さあ、俺のことはもうほっといてくれ。」フィルドリックが言う。「少なくとも、さっきよりはすっきりした気持ちで朽ちていけそうだ。」
扉に向かって後ずさる。フィルドリックは立ち去る君を見上げようともしなかった。


【手掛かり】
・内部トンネル…:外庭からマンパンの中郭に通じるトンネルがあるという噂だ。

【感想】
ここで少女の願いを聞き入れて解呪の呪文を唱えると、彼女は死霊の姿になって宿を飛び出していき、後日とある晩に襲ってきます。その姿はS2-101と同じです。
なお、この少女はS4-25で登場したヴァリケッシュとは別人です。念のため。
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