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S4-36 20日目:アルグバッドの住民 [ソーサリー4:王たちの冠]

この場所には一向に晴れない暗がりが立ち込めている。2,3羽の鳥が弱々しく哀れな声でさえずる。
火口を抜ける道が東西両側にある。一方は火口の縁沿いで、もう一方は火口寄りだ。
東の方角には薄い煙が立ち上っている。
見たところ、煙は常に出ているが、色は薄い。焚火の煙よりも霧に近い。

火口を抜ける道を途中から外れ、立ち昇る煙の方へ向かって、緩い地面を横切って歩く。
空気が暖かくなってきた。地中深くまで達する地割れらしき場所に近づくにつれ、君の背中を汗が伝い落ちる。
地割れの縁に慎重に歩み寄る。ここは心地良いくらいの温かさで、足元には柔らかい苔が生えている。
2,3分おきに、過熱された蒸気が音を立てて噴き上がっている。大気にはそれ以外にも何か感じられる。風だろう、たぶん。声のはずはない。
噴火口は地面にギザギザに開いた割れ目だ。黒い岩に深々と裂け目が入っている。立ち昇る蒸気の雲の中に、奇妙な人影がちらつく。何かをささやいているようにも見える。
耳を澄ませると、噴火口の深みから遠い声が聞こえてきた。まるで、君に話を聞いてもらおうと集まりささやき合う人々で一杯の部屋の、階上にあるバルコニーに立っているかのようだ。
だが、どうすればあそこで生きていられるというのだろう?
声はぶつぶつ不平を漏らしたり罵ったりしている。
「そこに誰かいるのか?」君が呼び掛ける。
声が大きくなって返ってくる。互いにざわざわとささやき合っているが、彼らの言葉は君の知らないものだ。
噴火口の近くは暖かいにもかかわらず、生き物の姿はない。
「RAp!」
緑色のかつらを引っ張り出し、頭に被ってから呪文を唱える。
噴火口から聞こえる声が、悪態、嘆き、不平の不協和音へと変わる。彼らは混乱し、ほとんどの者が支離滅裂になっているのだ。
声の主達にあいさつをすると、驚きの声が返ってきた。火口付近で緑色の影がちらつく。
「あんたには俺達の声が分かるのかい?」一人が尋ねる。「姿も見えるのか?俺達は生きているのか?」
「あんた達は死んでいる、」君が告げる。「幽霊だ。」
「そんな!」一人が泣き叫ぶ。
「いや、そうなんじゃ。」別の声が悲しげに言う。「わしらは死んであまりに久しいから、死んだのを忘れてしもうたんじゃよ。」
「あんた達は何者なんだ?」
「わしらはアルグバッドの死者でな。ここの村に住んでおった。それももう失われたがの。」
「この火口は、住むにはあまりに寂しい場所じゃないか。」塵にまみれた大地を眺めながら、君が言う。
「以前はこんな有様じゃのうてな。わしらはただの商人や農民で、周りの土地も活気があって肥沃じゃった。向こうの方に多くの旅人や学者が行き交う道があって、わしらのうちの何人かは宿屋に商品を売っておったものよ。」


【感想】
新年初投稿。今年中に終わらせられるといいなあ。
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S4-37 20日目:住民の幽霊から聖水をもらう [ソーサリー4:王たちの冠]

「どんな経緯で死んだんだ?」君が尋ねる。
「台地が裂けたんじゃ。全ての家が倒れ、炎に包まれた。この噴火口だけが残り、わしらはここに閉じ込められてしもうた。岩が押しつぶし、熱が焼き焦がしてきよった。」
君の周囲で嘆き悲しむ声が上がる。「まだ肌でそれを感じるの!」一人が叫ぶ。
「俺がしてやれることがあるかい?」
「死者をどうやって助けるというんじゃ?」
「火を消してくれ!」一人が叫ぶ。「あんたはアナランド人じゃないのか?」
一瞬君が凍り付く。
「…俺がアナランド人だ。」君が宣言する。
「偉大なるお方よ。」「予言されていたあの人が。」次々と声が返ってくる。「私達の救世主だわ。」「俺達の希望だ。」
「あんた達を助けるには遅すぎたよ。」君が言う。「もう死んでしまったのだから。」
「向こうの要塞の下には死の川が流れておってな。中には人々が囚われ、大魔法使いにすり潰されながら何とか生きながらえておる。」
あらゆる声が叫ぶ中、一斉に上がった声が喧騒を貫く。「呪文を破るんだ。彼を倒してくれ。そうすれば成仏できる。」
「どうやったら奴の元にたどり着ける?」
「奴は自分の塔に隠れておる、」声が答える。「わしらから、死から、死神からも身を隠してな。じゃが、奴の塔に入るにはある鍵が必要じゃ。」
噴火口から何かがせり上がってきて、君の足元に置かれた。拾い上げると、それは内側から光り輝く水の入った瓶だった。
「それを落とすでないぞ。」声がささやく。「それはカオス神自らが祝福されたものじゃ…。」
それを掲げて眺める。聖水だ。確かに力のある品だが、それでどうやって大魔法使いの塔の扉を開けるのだろう?
呪文が弱まってきた。頭のかつらを脱ぐと、彼らの言葉は再び意味のない音に戻った。
束の間、瓶を光にかざす。輝きの中に、冷酷なあの神の笑顔が見えたような気がしたが、やがて見えなくなった。
蒸気が噴き上がり、やがて近くの苔の上に露のように落ち着く。

噴火口から遠ざかるにつれ、空気が冷たくなっていく。


【変化点】
・+聖水

【手掛かり】
・聖水が塔への鍵だ:アルグバッド噴火口の幽霊が、聖水が塔への鍵になると教えてくれた。だが、そんなに単純なはずがない…。

【感想】
カオスは、S3-22で主人公に非情な選択を迫ってきた、いけ好かない神です。
ここで幽霊から聖水をもらった際、RESを唱えてから聖水を噴火口に注ぐこともできます。アプリ版でたまに出てくる鬼畜の所業がここにも[がく~(落胆した顔)]
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S4-38 20日目:マンパン要塞の威容に気圧される [ソーサリー4:王たちの冠]

歩いていくと、低い建物の前に出た。空気が君の周りで微かにそよぐ。まだ冷たいが新鮮だ。
風が建物の上層をなめていく。掴み草と黄色いガイラルディアの花が、割れた窓から飛び出ている。
この建物は、かつて宿屋か交易所か、あるいは大要塞へ向かう新参者を迎える案内所だったのかもしれない。それも今では、元の状態の半分ほどまで崩れている。
ガイラルディアを一輪引き抜く。その黄色い花は、ほとんどの野草がそうであるように何の役にも立たない。君はそれを脇に投げ捨てた。
骨組みに手を掛け、傾いた戸口をくぐって中に踏み込む。

崩壊した建物に入る。屋根がないので空に筒抜けだ。
念入りに部屋の残りを調べるが、興味を引くものは見つからない。内部はほぼ空っぽだ。
だが、一方の壁に伝言のようなものが刻み込まれている!
 「…スローベンドアを…三番目の呪文は…不可視の…」
興味深い内容だ。

戸口が君を招いているが、準備がまだだ。建物の輪郭で縁どられた空が君の思考を静めてくれる。目を閉じて、ゴリラの精霊に祈りを捧げる。
大いなる平穏が訪れるのを感じる。君はマンパンに近づいたが、まだ束の間の平和が得られるのだ。
さらに、荷物から調理した魚を一匹取り出し、空腹を満たす。
ここですべきことはもう何もない。古めかしい建物の外に出て、外光の中に戻る。

道まで引き返してから、もう一度周囲を見回す。道が幾つかの方向に伸びている。

2,3個の雲が天空を流れていく。
東の道を行く。道は岩に開いた深い割れ目のそばを通っている。割れ目は南へいくほど、どんどん深く広くなっている。
割れ目を越える方法はないが、それに沿って道が両側に伸びている。

火口の縁に開いた、埃っぽい曲がり道を上る。地平線が迫りくるマンパンの威容で唐突に占められる。
朝の時間が進むにつれ、風が強くなってきた。
その存在に魅了され、君の目が要塞の壁の輪郭をなぞる。まるで必死で天に祈る者のように、凸凹した尖塔が空に向かってよじれている。
鋭角で尖った先端がそこかしこに突き出し、悪魔のガーゴイルが壁の外側に並んでいる。
目を反らそうとするがどうしてもできない。まるで塔が君の目を握っているかのようだ。
その眺めはどんな勇敢な兵士の勇気もくじいてしまうだろう。それは君にも言えることだ。
君のみぞおちに恐怖がそのしこりを埋め込んだのを感じ、思わず身震いする。
要塞の光景に震えながらも、君は前進しようと無理やり自分を奮い立たせた…。


【変化点】
・現在/最大体力:7/17→12/17(祈り)→14/17(食事)
・食料:10→9

【手掛かり】
・スローベンドア:…スローベンドアを…三番目の呪文は…不可視の…

【感想】
「Brightspark」という植物が何か分からなかったので、「~スパーク」という名の品種があるガイラルディアを当ててみました。
マンパン要塞の遠景の挿絵が原作にもアプリ版にも載せられていますが、あれは確かにおどろおどろしく、かつてプレイした際には主人公と同じように恐怖におののいたものでした。
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この場面では、上が東で右が南。
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S4-39 20日目:俊足で監視兵を振り切る [ソーサリー4:王たちの冠]

噴火口の奥側の坂道をよじ登り、元の広い道に再び合流する。
ここはマンパン要塞への唯一の道なので、厳重な警備が敷かれているはずだ。道全体にわたって衛兵が配置されていることだろう。
岩だらけの狭い道を忍び足で進む。

ゆっくりと前進していくと、両側の岩壁が近づいてさらに狭くなってきた。他に抜け道はない。
道はそそり立つ要塞に近づくにつれ、緩やかに曲がりながら前方に続いている。荷車がかろうじて通れる幅だ。両側には山がそびえている。
土砂崩れが起きれば、あっという間に君は生き埋めになってしまう。バードマンは上空で君を待ち受けているのだろうか?
息を沈めて聞き耳を立てる。道を吹き抜ける風の音が聞こえるだけだ。
岩を掴んで岩壁を登ろうと試みるが、あまりに急峻過ぎる。2,3フィートよじ登っても、すぐに滑り落ちてしまう。
道は開けている。あからさまな罠も、そして迂回路も見当たらない。前進あるのみだ。

道に沿って、用心しながら歩を進める。
かろうじて馬が2頭並んで進めるだけの幅はあるが、両側には高い岩壁が脅すように迫っている。
君の回りに星の光が集まる。ここには魔法がある。
前方を見やると、崖の輪郭が幾分滑らかになっているのが分かる。まるでわざと岩が取り除かれたかのようだ。
さらによく観察すると、地面の縁から突き出た矢じりが見えるではないか。
「NIP!」
背負い袋から黄色い粉を取り出し、鼻で嗅いでから呪文を唱える。血管が激しく脈打つのを感じ、急に周囲の世界の動きがゆっくりと見えてくる!
そのまま全速力で駆け出す。

ぼやける岩壁を横目に、落ち着いて道を通り抜ける。
頭上から低いうめき声が聞こえたが、そのまま無視する。それが何であれ、今の君はたやすく置き去りにできるのだ。

道の終点まで来た。
険しい山頂の間の道をたどる。君の速さが鈍ってきたのを感じる。
太陽が天頂に向かうに従い、風が少し出てきた。
やがて道が開け、君は要塞の門の全貌を初めて目にした。20日間の行軍と苦難の果てに、ついに君はたどり着いたのだ。
ここからは、町の上空を縦横にそして端から端まで、飛び交いながら警備しているバードマンが2,3匹見える。何かを探しているようなそぶりだ。君の到着は遅過ぎたのだ。


【変化点】
・-黄色い粉

【感想】
ついに、マンパンの門までたどり着きました!第4部は、ここまではほんの序の口なのですが、この時点ですでに40話近くになっています。それでもまだ中に入っていないという。
Sorcery! 4_Screenshot_2020.01.27_12.11.23a.jpg
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